彦根市芹橋二丁目に密集する『足軽屋敷』
正式名称は『善利組足軽組屋敷』と言い、足軽組の中でも善利組が多く存在していたため、こう呼ばれています。
足軽屋敷には何があるの?と思っている方が多いと思いますが、屋敷や通りの知識を入れておくだけでも楽しく散策できるかと思い、記事にまとめてみました。ぜひ足軽屋敷の歴史に触れて、彦根のまちをもっと深掘りしてみてくださいね!
目次
足軽組屋敷とは
建物や通りに面白い特徴がある足軽屋敷。
足軽組屋敷は、彦根城と城下町を守るために築城の際、外堀の外側に足軽を集中させ、足軽屋敷が設けられました。
彦根藩の足軽組1200軒のうち、約950軒(中藪組・善利組(せり)・大雲寺組)が配置され、その中でも善利組が一番大きく、江戸末期には700軒ありました。なのでキャッスルロード(城下町)を抜けたこのあたり一帯(芹橋2丁目)を、正式名称では「善利組足軽組屋敷」と呼ばれています。
建物や通りには足軽屋敷特有の特徴が今もなお残されており、それを知っておくことでより一層、足軽屋敷を楽しめると思います。それでは、早速見ていきましょう!
建物の特徴
足軽屋敷の建物特徴は主に2つあって、「接道型」と、「前庭型」に分けられます。一体それぞれどう違うのでしょうか。
接道型
服部家住宅の外観。
こちらは服部家住宅ですが、足軽屋敷のほとんどがこのように主屋が道に面し、その脇に格子戸と板戸のつく木戸門を構える「接道型」です。大部分がこの構造なので、歩いているとすぐに見つけることが出来ます。
前庭型
辻番所&磯島家住宅
対してこちらは屋を前面道路よりやや奥まって建て、門・塀を構え、主屋との間に前庭を設ける「前庭型」です。写真にうつるのは辻番所と繋がっている磯島家住宅ですが、こちらは珍しくなかなかあまりお目にかかれないタイプの建物の特徴です。
防火壁
防炎にもしっかり工夫がされています。
当時(江戸時代)の火災では消火よりも周りへの延焼を防ぐことが第一とされていたため、板張りの外壁が丸ごと取り外せる構造になっています。取り外すと。土壁のみになっていてそれで防火に務めたそうです。そんなことができるとは!昔の人の知恵は本当にすごいですね。
辻番所(見張り小屋)
旧芹橋十二町目の通りと中辻通りの2つの道路に面しています。
これは辻番所に設置されている、見張り小屋にある「見張り窓」。通りに面したニ方向に設けられ、ここから敵が来ないか、変わった様子はないか見張りをしていたようです。辻番所は旧磯島家住宅と連なっていますが、足軽は旧磯島家住宅を経由することなく、直接この辻番所に出入りしていました。
外の様子をここからじっくり観察。
これは反対に辻番所の内側から見た見張り窓。外から見た時は、これでしっかり観察できるのかなと思いましたが、案外、外の様子ははっきりと見ることができます。二方向に設置されているので、周りをよく見渡せます。
足軽はこの少しの隙間から出入り。
こちらは辻番所入るための見張り役の出入り口。24時間体制にして、当番を交代していたようです。なるほど、ここからだと旧磯島家住宅を経由しなくていいということなんですね。この出入り口はとても狭く、本当に人が通れるの!?と思うぐらいの幅でした。
各足軽屋敷(住宅)について
吉居家住宅の外観。
各足軽屋敷はほとんどが南北方向の16の通りの両側にあり、間口5間、奥行10間を基本として区画されており、主屋は切妻造(きりづまつくり・二つの同じ大きさの長方形の平面を合掌形に寄り掛けた屋根形式)で、桟瓦葺き(さんがわらふき・平瓦と丸瓦を一体化させた波型の桟瓦を使用した屋根の葺き方)となっています。
毎年秋頃には、足軽屋敷の特別公開があり、内外の構造などを解説していただけるイベントがあります。その足軽屋敷特別公開の記事もひこつ〜(記事はこちらから)では書いていますので、よろしければそちらも参考にしてみてくださいね。
通りの特徴
それでは通りの特徴も見ていきましょう。通りには「どんつき」や「くいちがい」があって、歩くだけでもその歴史を感じることができます。知っておくと面白いので、ぜひ足軽屋敷に来た時は通りにも注目してみてください。
どんつき
看板の先は行き止まりです。
「どんつき」は、簡単に言うなら行き止まりと言うとイメージが浮び易いかも知れませんね。お城が見えているのにそのままでは進めず、急に狭くなって、最後には急に行き止まりになってしまうと言うように、敵が迷子になってしまうようなそんな構造になっています。
くいちがい
辻番所近くの通り。
「くいちがい」は、どんつきと同じく敵からの防衛のために、できるだけ直線の道を避け、意図的に曲げたり不意に突き当たりになったりします。写真でも分かるように、直線のようだけど道幅がなんだかズレていたり、わざと敵にストレスを与えるような構造になっています。
シュロの樹
ヤシの木みたいです。
足軽屋敷には、「シュロ」という樹が敷地境界線の角に必ず植えられています。詳細は明らかにはなっていないようです。一説では、境界の目印として、ほか内職などでホウキやカゴの材料として使われていたのでは?と言われていますが、謎にみちたままです。確かに、言われてみればいたるところでシュロの樹が植えられているのを発見しました。
アクセス
足軽組屋敷一帯が密集する芹橋二丁目は、キャッスルロードからも近く、観光にもおすすめのエリアです。